stand.fm「弁護士しんみなとの弁護士の法律ラボ」書き起こし
【2021年4月16日放送 #3 法律の解釈に必要なもの-法律の勉強はRPGだ!-】
弁護士のしんみなとたくみです。
以前、法律の勉強は「解釈すること」という話をしました。
では、解釈する力を見つけるためにはどのような知識が必要なのでしょうか?
そもそも、法律って何のためにあると思いますか?
皆さんのイメージのとおり、争いごと、紛争が起こった時にそれを解決するためにあります。
もちろん、それ以外にも役割はありますが一番の役割は紛争解決です。
紛争が起きた時に解決の指針になるのが、法律です。
法律を解釈適用して紛争を解決する、これが法律家の仕事です。
では、我々法律家はどのように法律を解釈しているのかですが、その際、3つのアイテムを装備します。
RPGゲームの武器・防具・アクセサリーみたいなものです。
法律家が装備する3つのアイテムはこれだ!
では、法律家にとっての武器・防具・アクセサリーは一体なんでしょうか。
武器は条文、防具は判例、アクセサリーは学説となります。
つまり、我々は、条文・判例・学説を駆使して、紛争を解決するのです。
条文
条文は、法律として具体的に書かれた文章のことです。刑法第199条とか民法90条とかです。
全ての紛争は、事案に条文を当てはめて解決をしていきます。
しかし、条文は、様々な紛争に対応できるように抽象的に規定されています。
そのため、具体的事案にその条文が適用できるのかが問題になることがあります。
その際に参考になるのが、判例です。
判例
判例は、過去の紛争に対する最高裁判所の判断のことです。
日本には、簡易裁判所、地方裁判所、高等裁判所などいくつかの裁判所がありますが、判例はその中でも最高裁判所が示した判断だけを指します。
それ以外の裁判所の判断は、裁判例と言います。
たとえば、隣に住むおばちゃんが突然、大音量で音楽を長時間かけたり、音楽に合わせて布団たたきで布団を叩きながら大声を出したりしたため、精神的に追い込まれ睡眠障害や頭痛などを発症した。という事例で、このおばちゃんに刑法204条の傷害罪が成立するのかというのが問題となりました。
刑法204条には、このように規定されています。「人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役・・・」と。
皆さんの一般常識からすると、「傷害」と聞くと、ケガを負わせるというイメージだと思います。
そうすると、今回のような精神的な症状はケガをしたわけではありませんので、おばちゃんの行為が傷害罪に該当するとはちょっと考えにくいですよね。
一方で、被害者からしてみれば、睡眠障害や頭痛などで病院に通う必要が出て、それってケガしたのと同じじゃん!とも言えます。
このように、条文を見ただけでは解決できない問題のことを「論点」と言います。
この論点に対する適切な結論を導くために、法律を解釈する必要があるのです。
今回の場合、刑法204条の「傷害」という言葉に精神的な症状があらわれたことも含まれるのか?そもそも、刑法204条って何を保護するための条文なのか?このような点まで遡って、考えを巡らせるわけです。
そして、この論点に関して、最高裁判所が示した法律の解釈を判例と言います。
学説
最後に、学説ですが、これは、論点に対する学者の意見です。
一般的に、学者の中で常識になっている考えを通説、多くの学者が賛同している考えを多数説、あまり賛同されていない考えを少数説と言います。
これらの学説は、法律を解釈する際の参考にします。
このように、法律家の仕事は、これらの装備を駆使して、法律を解釈し、紛争を解決することなんです。
特に、実務では、条文と判例が重要になります。
私のこの配信では、超入門編では条文を中心に。論点については、軽く紹介する程度にします。
その後の入門編では、論点に関する判例の考えまで簡単に触れたいと思っています。
判例の詳しい内容や学説については、司法試験を目指す方向けになりますので、また別の機会でお伝えしたいと思います。
皆さんは、まずはしっかりと条文を理解できるようにしていきましょう。
では、次回は、条文の読み方を紹介したいと思います。
それでは、今日も一日がんばっていきましょう!