stand.fm「弁護士しんみなとの弁護士の法律ラボ」書き起こし
【2022年10月29日放送 #16 刑事訴訟法の全体像-なぜ弁護士は犯罪者の弁護をするのか?-】
弁護士のしんみなとたくみです。
本日は、刑事訴訟法の全体像です。
刑事訴訟法の用語は、ドラマやニュースでもよく取り上げられるので、聞きなじみがあるのではないでしょうか?
ただ、ちょっと使い方が間違っている場合もあるので、まずは、刑事訴訟法に出てくる登場人物を整理したいと思います。
刑事訴訟法について
そもそも、刑事訴訟法は、犯罪を犯したと疑われる人が本当にその犯罪を犯したのか、犯したとしてその場合の刑罰をどうするのかを決める手続きです。
つまり、刑事訴訟のスタートは、「こいつは犯罪者だ!」と裁判所に訴える人と犯罪を犯したと疑われ訴えられる人がいるはずですね。
登場人物①:検察官
ということで、まず、裁判所に訴える人は、検察官です。
検察官が裁判所に訴える行為を「起訴」といいますが、起訴できる権限は検察官のみが独占しています。
登場人物②:被告人
では、次に検察官に訴えられた人ですが、訴えられた、つまり起訴された人を「被告人」といいます。
ここで注意点ですが、ニュースなどでは、この被告人のことを単に「被告」と呼んでいることがありますが、あれは間違いです。
「被告」は民事訴訟で訴えられた人のことを指します。
あと、「被告人」に似た言葉で「被疑者」という言葉がありますが、この違いは、起訴されたか否かの違いです。
被疑者は「疑」という字が入っていることからわかるとおり、犯罪をしたと疑われてはいるが、まだ起訴されていない人です。
ニュースとかでは「容疑者」って言われたりしますよね。
ちなみに、容疑者という言葉は日常用語で、法律用語ではありません。
一方、被告人は、先ほど説明したとおり、犯罪をしたと疑われ、起訴された人です。
登場人物③:裁判官
さらに、刑事訴訟では、当然ですが、裁判官も登場人物の一人です。
登場人物④:弁護士
また、多くの刑事訴訟では、被告人のために弁護人が選任されますので、弁護人も登場人物になります。
さて、今、弁護人という話が出ましたが、よく弁護士をしていると「なんで、犯罪者の弁護を弁護士はするんですか?そんな悪い奴の味方なんてしなくていいでしょ?」と言われることがあります。
この点を理解していただくために、刑事訴訟法の目的・役割について考えていきましょう。
刑事訴訟法の目的・役割
刑事訴訟で被告人が有罪となれば、国は刑罰権を発動して、被告人に刑罰を科します。
刑罰は、皆さんもご存知のとおり、罰金で国民からお金を取り上げたり、懲役で国民の身体の自由を制限したり、死刑で国民の命を奪ったりと、非常に強力な権力であることは想像できると思います。
そして、以前stand.fm講座でも話した内容ですが、刑事訴訟法は、国が国民に刑罰権を発動するか否かを決める手続きであるということからすれば、いわゆるタテの関係、公法関係なわけです。
つまり、この場合、国は、暴走しがちという話でしたよね。
刑事訴訟においても国が証拠をでっちあげて無罪の国民を有罪にしてしまうかもしれません。
いわゆる、「冤罪」ですね。
冤罪を生まないためにも、国家権力に歯止めをかける必要があります。
では、どうすればいいでしょうか?
ここで、刑事訴訟法第1条を見てみましょう。
- 刑事訴訟法第1条
- この法律は、刑事事件につき、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正且つ迅速に適用実現することを目的とする。
ようは、「基本的人権の保障」と「事案の真相を明らかにすること」が刑事訴訟法の目的な訳です。
ここで、事案の真相を解明しようと、捜査機関(国家権力)側に大きな権限を与えると、当然ですが、違法な捜査や証拠のでっちあげなど、国民の人権が無視される結果になるかもしれません。
そこで、国民の基本的人権はしっかり保障しようという形でブレーキをかけているわけです。
しかし、実際、被告人側が違法な捜査を受けたとか、証拠をでっちあげられたとかを法廷で説明したりするのは難しいですよね?
そこで、弁護人が必要なわけです。
このように、弁護人の力を加えて、ブレーキをより強くしているのです。
こうすることで、捜査機関側も適正な捜査や証拠提出を行い、冤罪の可能性を極限まで低下させているわけです。
まとめ
我々弁護士が、なぜ犯罪者の弁護をするのかというと、刑事訴訟における最大の間違い、「冤罪」を絶対に発生させないためです。
そのために、弁護人はなくてはならない存在なのです。
本日は以上です。
今日も一日頑張っていきましょう!